筋トレを行ううえで、多くの人がまず気にするのは「筋肥大に欠かせないタンパク質をどのように摂取するか」です。トレーニング後にプロテインドリンクを飲む人もいれば、食事からタンパク質を摂ろうと考える人も多いでしょう。その際、肉と魚は代表的なタンパク源として挙げられますが、「具体的にどちらが筋トレに適しているのか」「毎日のメニューをどう組み合わせると効果的なのか」といったポイントは、意外と答えが出しにくい問題です。
肉と魚には、それぞれ以下のような特徴があります。
どちらを選ぶべきかは、目的や体質、好みなどによっても変わってきます。筋トレの目的が筋肥大であれば、短時間で高タンパクを摂取しやすい肉が中心になりやすい一方、健康的に体脂肪を落としながら筋肉を付けたい場合は、低脂質・高タンパクの魚をメインに据える方法が好まれることもあります。
しかし、一概に肉は太りやすく魚はヘルシーと決めつけるのは少々乱暴です。調理法や部位、魚種の選び方によって栄養バランスは大きく変わりますし、味の好みも大切な要素です。実際、飽きずに長く続けられる食事プランこそが、最終的にはトレーニング成果の向上につながります。
これから順を追って、肉と魚に分けてメリット・デメリットを解説したうえで、筋トレの効率を上げる食事管理のポイントを紹介します。自分の目的やライフスタイルに合ったタンパク源をどう選び、どう組み合わせるかのヒントにしていただければ幸いです。
肉と魚、それぞれの基礎知識

肉が筋トレに与えるメリットとデメリット
メリット
- 高濃度の動物性タンパク質
肉の最大の特徴は、何と言っても高いタンパク質含有量です。特に鶏ささみや鶏むね肉は低脂質で、タンパク質を効率よく摂取できます。牛ヒレや豚ヒレ、赤身肉なども脂質が少なく、筋トレ向きの食材として人気です。 - 豊富なビタミンやミネラル
肉には鉄分やビタミンB群などが豊富に含まれており、エネルギー代謝や血液づくりにおいて重要な役割を果たします。疲労回復や貧血対策などにも有効で、筋トレのパフォーマンス維持につながります。 - 食べごたえによる満足感
肉特有の噛みごたえや風味は、食事の満足感を得やすく、長く続けるうえでもメリットになります。食事制限時に起きやすいストレスを軽減できる可能性があります。
デメリット
- 摂り方によっては脂質が多い
部位や調理法次第では脂質が多くなり、カロリーオーバーにつながることもあります。筋トレで体脂肪を落としたい場合は、鶏ささみや赤身肉など脂質の少ない部位を選び、調理方法も工夫しましょう。 - プリン体やコレステロールの過剰摂取リスク
肉に含まれるプリン体やコレステロールを過剰に摂取すると、痛風や生活習慣病などのリスクが高まる可能性があります。あくまでもバランスを意識した摂取が大切です。 - 過剰摂取で胃腸への負担
肉は消化に時間がかかる場合があり、食べすぎると胃腸に負担がかかることがあります。消化不良はトレーニング効率にも悪影響を及ぼすので、無理のない量を適切に摂りましょう。

魚が筋トレに与えるメリットとデメリット
メリット
- 低脂質・高タンパクの種類が多い
白身魚やマグロの赤身など、魚の中には非常に低脂質かつ高タンパクな種類が多く存在します。調理法によってはさらに脂質を抑えることができ、筋トレで体脂肪を落としたい人にも向いています。 - オメガ3系脂肪酸が豊富
魚、特に青魚にはオメガ3系脂肪酸(EPA・DHAなど)が多く含まれています。これらは抗炎症作用や血液サラサラ効果が期待され、トレーニング後の回復をサポートするうえでも注目される栄養素です。 - 和食文化との相性が良い
日本食には魚を中心としたレシピが多く、焼き魚や煮魚など、調理法もさまざまです。味付けのバリエーションを広げやすく、飽きにくい点も魚の魅力と言えるでしょう。
デメリット
- 魚種による脂質量のばらつき
青魚やサーモンなどはオメガ3を多く含む一方、意外と脂質量が高いものもあります。カロリー制限をしている場合は、魚だからといって油断せず、魚種や部位を選ぶ必要があります。 - 調理や保存にやや手間がかかる
魚は肉に比べて傷みやすく、家庭での調理時に扱いが難しいと感じる方もいます。下処理や焼き加減など、少し手間がかかる点はデメリットかもしれません。 - 味の好みが分かれる
肉と比べて魚臭さが苦手という人もいます。特に海外の食文化に慣れた方にとっては、毎日魚を食べ続けるのはつらい場合もあるかもしれません。

肉と魚の栄養構成の違いを理解しよう
肉と魚を選ぶうえで、最も注目したいのがタンパク質と脂質のバランス、そして付随するビタミン・ミネラルなどの栄養素です。
- タンパク質:肉・魚ともに部位や種類で変動するため、一概に「肉の方が多い」「魚の方が多い」とは言い切れません。
- 脂質:魚は脂質量が少ないとイメージされがちですが、サバやサーモンなど脂質の多い種類もあります。ただ、その脂質は良質なオメガ3系であることも多いです。
- ビタミン・ミネラル:肉にはビタミンB群や鉄分が豊富、魚にはビタミンDやカルシウム、オメガ3などが多い傾向があります。
結局のところ、自分の筋トレの目的(筋肥大、減量、健康維持など)に応じて、肉と魚を使い分けることが最適解となります。次章では、筋トレ効率を高めるための食事管理のポイントをさらに掘り下げていきましょう。
筋トレ効率を高める食事管理のポイント

タンパク質の摂取量とタイミング
筋トレで身体を変えたいのであれば、1日に必要なタンパク質量を計算することから始めましょう。一般的には、体重1kgあたり1.2〜2.0g程度のタンパク質を摂取すると筋肥大に有効とされています(目的やトレーニング強度によって異なる)。例えば体重70kgの方であれば、84〜140g前後です。
また、タンパク質を1日3食でまとめて摂るよりも、3~5回に小分けして摂取した方が効率的に筋合成を促進できるという意見もあります。プロテインドリンクなどのサプリメントは、食事で足りない分のタンパク質を補う目的で取り入れると良いでしょう。
- 朝食での摂取:睡眠中は栄養摂取が途絶えているため、朝にタンパク質をしっかり補給すると筋肉の分解を抑えられます。
- トレーニング前後:特にトレーニング後30分~1時間はゴールデンタイムと呼ばれ、タンパク質と炭水化物をバランスよく摂取することで筋合成を高める効果が期待されます。
脂質・炭水化物とのバランス
筋肉をつけるうえで重要なのはタンパク質ですが、エネルギー源となる炭水化物、ホルモンバランスを保つうえで必要な脂質もまた無視できません。過度な脂質制限はホルモンの分泌低下を引き起こし、筋肥大やトレーニング効果を損なうリスクがあります。
- 脂質:体内でホルモンの材料になるため、適度な摂取が必要。肉の脂質は飽和脂肪酸が多い傾向にある一方、魚には多価不飽和脂肪酸が含まれるため、両方をバランスよく摂取するのが理想的。
- 炭水化物:トレーニング時のエネルギー源として重要。筋グリコーゲンをしっかり補給するために、白米やパスタ、オートミールなどの炭水化物を適度に組み合わせる。
調理法の工夫で得られるメリット
肉と魚を調理する際のポイントとしては、脂質をなるべくコントロールすることが挙げられます。
- 肉の場合:茹でる、蒸す、焼くなどの調理法で余分な脂を落とし、部位もささみやむね肉、赤身肉などをチョイスすると良いでしょう。味付けを濃くしすぎると塩分過多になりやすいので、スパイスやハーブを活用して風味を加えましょう。
- 魚の場合:皮付きのまま焼くと脂質が落ちにくいですが、皮を取り除いたり、ホイル焼きにすることで余分な脂を落としやすくなります。また、煮魚にする場合は、味付けに砂糖やみりんを多用すると糖質が増えるため、その点も注意が必要です。
肉と魚はどっちが有利?目的別の選び方
筋肥大を目指す場合

筋肥大を目的とする場合は、トレーニング強度も高く、筋肉に対する損傷も大きくなるため、タンパク質の摂取量をやや多めに確保することが望ましいです。短時間でたくさんのタンパク質を効率よく摂りたいのであれば、肉中心のメニューが取り入れやすいでしょう。
- 肉の活用法:鶏むね肉や豚ヒレ、牛赤身肉を焼いたり茹でたりして、余分な脂を落としたうえで食べる。ステーキや焼肉でも部位に気を付ければ十分に筋肥大向きのメニューになります。
- 魚との組み合わせ:胃もたれを防ぎたい日や、疲労感が強いときには消化の良い白身魚を取り入れると良いでしょう。
引き締まった身体を目指す場合

脂肪を落としながら筋肉をキープ、またはやや増やしたいという場合には、食事全体のカロリー制限が求められます。魚中心の低脂質メニューは減量期にとても役立ちます。
- 魚の活用法:サバやサーモンなど脂質の多い魚でも、オメガ3系脂肪酸であれば健康的な効果が期待できるため、極端に避ける必要はありません。ただし、カロリーは把握しておきましょう。
- 肉との組み合わせ:脂質を抑えた鶏ささみやむね肉は、減量期における優秀なタンパク源です。魚メインでも飽きが来る場合は、肉をうまくローテーションして食事を継続することがポイントです。
健康維持と筋力向上を両立させたい場合
筋力アップだけでなく、健康状態を保つことも重視している場合は、「肉・魚どちらか一方に偏る」という考え方は捨てましょう。バランスよくさまざまな食材から栄養を摂ることで、多角的に健康をサポートできます。
- 毎日の献立に両方取り入れる:朝は魚、昼は肉、夜は魚、あるいは週に数日は肉の日、数日は魚の日といった具合に、習慣として無理なく取り入れやすい方法を探してみてください。
- 栄養補助食品の活用:魚が苦手な人は、オメガ3のサプリメントを活用するのも一つの手です。また、肉が苦手な人はプロテインや卵、乳製品、豆製品などでタンパク質を補いましょう。
おすすめレシピと食事プラン
ここからは具体的なレシピ例や、一日の食事プラン例を挙げていきます。もちろん個々の体質やトレーニング内容、生活リズムによって最適なプランは異なりますので、あくまでも参考にしてください。
肉中心の食事プラン例

朝食(例)
- オートミールまたは玄米ごはん
- 鶏むね肉のソテー(オリーブオイルで軽く焼き、スパイスで味付け)
- 野菜サラダ(レタス、トマト、パプリカなど)+ノンオイルドレッシング
昼食(例)
- 牛赤身ステーキ(脂身を落とし、塩・こしょうでシンプルに調理)
- 茹でブロッコリー、グリルしたパプリカ、玉ねぎ
- 玄米ごはん
- 味噌汁(わかめや豆腐を具にする)
夕食(例)
- 豚ヒレ肉のしゃぶしゃぶ(脂質を落としやすい)
- きのこ類や葉物野菜をたっぷり
- 締めは雑炊にして、炭水化物も適度に補給
間食(補食)
- プロテインドリンク(トレーニング後に摂取)
- ギリシャヨーグルト
このように肉中心のメニューを組むと、1日を通して高タンパクかつ、必要最低限の脂質と適度な炭水化物を摂りやすくなります。ビタミン・ミネラル補給のために野菜や果物も意識して取り入れましょう。
魚中心の食事プラン例

朝食(例)
- サバの水煮缶を使った和風サバみそ煮(缶詰を軽く温めて味噌を足してアレンジ)
- 玄米ごはん
- 味噌汁(わかめ、豆腐)
- ほうれん草のおひたし
昼食(例)
- サーモンのホイル焼き(玉ねぎ、しめじ、にんじんなどと一緒に)
- 玄米ごはん
- 具だくさんの野菜スープ
夕食(例)
- マグロの刺身または漬け丼(炭水化物量を調整できる)
- 野菜サラダ(海藻や大豆などをトッピングすると栄養バランスアップ)
- 豆腐と長ネギの味噌汁
間食(補食)
- ギリシャヨーグルトやプロテインバー
- 小腹が空いたときにはナッツ類を少量
魚中心のプランでは、オメガ3系脂肪酸を摂取できるチャンスが増えます。青魚ばかりでも飽きてしまうので、サケや白身魚、または刺身や缶詰など調理法や形態を変えながら続けやすい工夫をしてみてください。
肉と魚を組み合わせるプランの考え方
1日の中で肉と魚をバランスよく取り入れる方法もおすすめです。たとえば、朝食は卵や魚を使ったメニュー、昼は肉中心、夜は魚中心など、時間帯ごとに変化を付けると飽きにくく、栄養バランスが整いやすくなります。
- 朝食:魚+卵の和食
- 昼食:肉メインの洋食や中華
- 夕食:さっぱりとした白身魚やツナ缶など
加えて、野菜や果物も積極的に摂取することで、ビタミンやミネラルの不足を補い、腸内環境を整えることが可能になります。特にトレーニングを継続していると、ビタミン・ミネラル不足による疲労感が蓄積しやすいので注意が必要です。
まとめ
筋肥大をめざすのであれば、肉中心に高タンパクな食事を組み立てると効率よくタンパク質を摂取できます。減量や引き締まった身体をめざすのであれば、魚中心の低脂質な食事が有効です。ただし、飽きずに長期的に続けるためにも、肉と魚の両方をうまく使い分けることが最終的には理想的なアプローチと言えるでしょう。
また、食事管理にはタンパク質だけでなく脂質や炭水化物、ビタミン・ミネラルのバランスも重要です。極端に特定の栄養素を制限することは、筋トレのパフォーマンスや健康状態を損なう恐れがあります。自分の目的に合わせて適度に食事内容をコントロールし、必要に応じてサプリメントプロテイン、オメガ3系サプリなどを活用するのも効果的な方法です。
最後に、栄養摂取はあくまでも筋トレ効果を高めるための一要素であり、良質なトレーニング計画や十分な休息、睡眠も欠かせません。これらを総合的に管理することで初めて、理想の体づくりに近づくことができます。
本記事を参考に、肉と魚どちらも上手に取り入れながら、ご自身の筋トレライフをさらに充実させていきましょう。目指すゴールが筋肥大であれ、引き締まった身体であれ、あるいは健康維持であれ、「食事の選択」は成果を左右する大きなカギです。自分に合ったプランを見つけて、日々のトレーニングと食生活を楽しんでください。
以上で、「筋トレに最適なのは肉と魚のどっち?食事選択で成果を左右する秘訣」をテーマに、肉と魚の特徴や食事管理のポイントを網羅的に解説してきました。少しでも参考になる情報があれば幸いです。引き続き、バランスの良い食事と継続的な筋トレで、理想のボディメイクを目指しましょう。