魚の下処理と塩の関係とは?

魚を美味しく食べるために欠かせないのが「下処理」と「塩」です。ただ魚をさばいて調理するだけでなく、塩を上手に使うことで、臭みを取り除き、旨味を引き出し、料理全体の完成度がぐっと上がります。
魚の下処理とは、主に鱗(うろこ)を落とし、エラや内臓を取り除き、必要に応じて血抜きや洗浄を行う工程を指します。そして塩を使った処理は、その後に行われる重要な仕上げとして、魚をより美味しく安全に食べるためのテクニックです。
本記事では、市場で購入した鮮魚やスーパーのパック魚、自分で釣ってきた魚、冷凍で保存された魚などを対象に、それぞれのケースに応じた下処理方法と塩の使い方を丁寧に解説していきます。魚の種類や調理法によって適切なアプローチを選ぶことで、家庭料理のクオリティは驚くほど向上します。
下処理の基本ステップ

鱗(うろこ)を落とす
魚の表面を覆う鱗は、加熱すると臭みや苦味の原因になることがあります。そのため、まずは鱗取りから始めます。まな板の上に濡れた布巾や滑り止めシートを敷いて、魚が動かないように固定すると安全に作業できます。
鱗取り専用の道具や包丁の背、スプーンなどを使って、尾から頭に向かってこするように鱗をこそげ落とします。鱗は飛び散りやすいので、新聞紙を敷いたり、ボウルの中で作業したりすると後片付けが楽になります。
エラと内臓を取る
魚の内臓には雑菌や臭みの原因物質が含まれているため、すぐに取り除くのが基本です。まずエラぶたを開き、包丁で根元を切ってエラを取り除きます。続いて腹を割き、スプーンや指を使って内臓をかき出します。
血合い(背骨沿いの血のかたまり)は臭みの原因となるので、歯ブラシや竹串でこすって丁寧に洗い流します。このとき、流水で内側までしっかり洗い、ぬめりも取るように心がけましょう。
血抜き(釣った魚の場合)
釣ったばかりの魚は、新鮮だからこそ、適切な血抜きを行うことで生臭さを抑え、保存性も高まります。エラの下を切り、尾の血管も切断し、バケツにためた海水や流水の中でゆっくり血を抜いていきます。完全に血が抜けたかを目視で確認し、水が澄んできたらOKです。
血抜きをきちんと行った魚は、時間が経っても身が白く美しく、臭みが少なくなり、味も格段に良くなります。釣り上げたらなるべく早めに処理しましょう。
魚に塩をふる目的と効果

臭みを取る
魚の臭みの原因は、皮膚や内臓にあるアミン系物質、ぬめり、水分の残留によるものです。塩をふることで余計な水分と一緒に臭いの成分を引き出し、洗い流すことができます。特に青魚や淡水魚などは塩での処理が効果的です。
身を締める
塩にはタンパク質を変性させる性質があり、これによって魚の身が引き締まり、加熱調理時に崩れにくくなります。焼き魚や煮魚など、形を保ちたい調理法においてはとても重要な工程です。
旨味を引き出す
余分な水分を塩で引き出すことにより、魚の身の中にある旨味成分であるアミノ酸やイノシン酸が濃縮されます。特に塩をふった状態で時間を置く「塩締め」は、素材の持ち味を最大限に引き出す調理法です。
塩のふり方と時間の目安

魚の種類や身質によって、塩の量や放置時間を調整することが重要です。
魚の種類 | 塩の量 | 放置時間 | 備考 |
---|---|---|---|
白身魚(タイ、スズキなど) | 両面にまんべんなく | 20〜30分 | 優しく塩をなじませる |
青魚(アジ、サバなど) | やや多めに強め | 15〜20分 | 臭みを抑える目的で使用 |
脂の多い魚(サーモンなど) | 少なめでOK | 10〜15分 | 身崩れ防止や風味向上に |
塩をふった後は、キッチンペーパーや清潔な布巾で水分をしっかり拭き取るのがポイントです。これにより臭みの原因となる水分が残らず、焼いたときに皮目がパリッと仕上がります。
魚種別|塩の使い方とおすすめ処理法
アジ(鯵)
- 下処理後、やや多めの塩をまぶして20分放置。
- 軽く洗って水気を拭き、なめろうやたたき、唐揚げに。
サバ(鯖)
- 塩をふってから10〜15分程度おき、さらに酢締めにするのが定番。
- 塩焼きや味噌煮など、脂の強い料理にもおすすめ。
イワシ(鰯)
- 手開きしたら、すぐに軽く塩を振り水気を取る。
- 梅煮、フライ、つみれ汁にも応用可能。
タイ・スズキ
- 鱗と内臓を丁寧に処理後、薄塩で30分ほど寝かせる。
- 塩焼き、酒蒸し、昆布締めなど上品な料理向き。
塩の種類による違い
精製塩(食卓塩)
- 最も一般的。粒子が細かく、素早く浸透する。
- 味は直線的でキレが強いが、料理によってはやや尖る印象も。
天日塩・海塩
- 自然乾燥された塩で、ミネラル分が豊富。
- 風味がまろやかで、素材の味を引き立てる。
- 焼き魚や干物の仕込みにおすすめ。
岩塩
- 地層から採取される塩で、粒が大きく存在感がある。
- 味が強く、肉や洋風魚料理との相性が良い。
- 焼き物の仕上げに振ると風味が引き立ちます。
下処理後の保存と応用レシピ

保存方法
- 魚の水分をよく拭き取り、密閉して冷蔵(1〜2日以内が目安)。
- 長期保存する場合は、軽く塩をふってからラップして冷凍。
- 冷凍後はできるだけ早めに使い切ることを推奨。
- 干物に加工する際は、天日または冷蔵庫内でゆっくりと乾かすと旨味が凝縮される。
塩魚を活用したレシピ例
- 塩焼き:グリルまたはフライパンでシンプルに焼くだけで、塩の旨味が生きた逸品に。
- 煮付け:塩締めした魚は煮崩れしにくく、甘辛の煮汁と好相性。
- 南蛮漬け:塩をしてから揚げることで、酸味とのバランスが絶妙に。
- 揚げ物:軽く塩で下味をつけてから揚げると、衣がパリッと香ばしく。
- 干物焼き:自家製の一夜干しは、塩の量と乾燥時間で好みの味に調整できます。
まとめ
魚をおいしく食べるためには、下処理と塩の使い方がとても重要です。適切な工程を踏むことで、臭みが消え、身が締まり、旨味が増し、仕上がりに大きな差が出ます。特に塩はただ味付けするだけでなく、調理前の素材に働きかける“調理の助っ人”としての役割も果たします。
素材や調理法に応じて、塩の種類やふり方、置き時間を変えることで、家庭でも十分にプロのような味わいに近づけます。少しの手間と工夫を加えることで、魚料理の可能性はぐっと広がるのです。
普段の食卓に取り入れられるちょっとした技として、ぜひこの記事の内容を参考に、ご家庭での魚料理を一段とレベルアップさせてみてください。
※参考文献:水産庁「おさかな料理の基本」https://www.jfa.maff.go.jp/