はじめに:ボラじゃないとダメなの?カラスミの常識を覆す
「カラスミってボラの卵じゃないと作れないんでしょ?」「手に入りにくいし高いから無理…」——そんなイメージを持っていませんか?
実は、カラスミはボラ以外の魚卵でも美味しく作ることができるんです。マグロ・サワラ・サバ・スズキなど、意外な魚が立派なカラスミの素材になることも。
この記事では、カラスミの基本とされる「ボラ以外の魚卵」で作る方法に焦点を当て、自宅で手軽に挑戦できる自家製カラスミの作り方を解説します。保存性も高く、贈り物やおつまみとしても喜ばれる一品に仕上げましょう。
カラスミとは?基本の知識とボラ以外の代替魚

カラスミの由来と特徴
カラスミ(唐墨)は、魚卵を塩漬けにした後にじっくり乾燥させて仕上げる、日本の伝統的な保存食の一つです。その濃厚で独特な風味が特徴で、特に日本酒や焼酎などとの相性が良く、長年にわたり「大人の珍味」として親しまれてきました。長崎・瀬戸内・金沢といった地域では地域ごとの製法が伝承されており、各地で微妙に異なる味わいが楽しめるのも魅力のひとつです。
高級珍味として知られており、日本三大珍味(このほかにウニ、コノワタ)の一つとしても有名です。その価格や希少性の高さから、贈答品としても重宝され、年末年始や祝いの席でも重宝される存在となっています。
「カラスミ」という名称は、中国から伝来した保存食「烏魚子(うぎょし)」に由来します。烏魚(ボラ)の卵巣を加工して作られるもので、日本に渡った際に「唐(中国)」からの墨のような形状をした食材という意味合いで「唐墨(カラスミ)」と呼ばれるようになりました。この語源は現在の製法や材料の歴史的背景を物語っています。
なぜボラが定番なのか

ボラの卵巣は非常に大きく、しっかりとした皮に包まれているため、加工時に破れにくいという点が大きな利点です。この物理的な強度は、塩漬けや乾燥といった長時間の処理工程においても卵の形を保ちやすく、見た目も美しく仕上がるというメリットにつながります。
また、ボラの卵は脂質が控えめで水分も適度にあるため、塩をなじませやすく、均等な脱水が可能になります。こうした性質により、乾燥後の食感が硬くなりすぎず、ほどよくしっとりとした仕上がりになります。さらに、臭みが少なくクセのない味わいも、多くの人に好まれる要因のひとつです。
日本全国の市場で比較的手に入りやすいことや、漁獲量の安定性も、伝統的にカラスミの原料としてボラが重用されてきた理由と言えるでしょう。
ボラ以外で使える魚卵の例
- マグロ(ビンチョウやキハダ):脂が少なくカラスミ向き。風味がしっかり。
- サワラ:クセが少なく滑らかな舌触りに仕上がる。
- スズキ:入手しやすく、乾燥工程に強い。
- サバ:皮が薄いが味わい深く、試す価値あり。
- アイナメ・カレイ:卵が小粒だが、味に奥行きがある。
カラスミの作り方|各魚種魚卵での手順

下処理と塩漬けの基本
- 卵巣を丁寧に取り出す(破れやすいので注意)
- 取り出す際は腹部を浅く切り込み、指でそっとはがすようにすると皮が破れにくくなります。
- 取り出した後は、表面の血管や余分な脂を軽く拭き取っておきましょう。
- 血抜き(ピンセットなどで血管を丁寧に除去)
- 細かい血管をピンセットや竹串でつまみ出すようにして丁寧に取り除きます。
- この工程を丁寧に行うことで、仕上がりの色と風味がぐっと良くなります。
- 水分をふき取り、全体にしっかり塩をまぶす
- キッチンペーパーなどで表面をよく拭き、卵巣の水気をしっかり取ります。
- 天然塩や藻塩などをたっぷりとまぶし、表面だけでなく裏面や隙間にも均等に塩を当てるのがポイントです。
- 冷蔵庫で3〜5日塩漬け(途中で塩を足す)
- ラップに包まず、密閉容器にキッチンペーパーを敷いて卵巣を置き、上からも塩をふって冷蔵庫へ。
- 2〜3日目に一度取り出し、出てきた水分を拭き取り再度塩を加えることで、均等な味わいに仕上がります。
塩抜きと成形のポイント

- 塩を水で洗い流し、ぬるま湯で30分程度塩抜き
- 卵巣表面に残っている塩分をやさしく洗い流し、内部まで均等に塩が抜けるようぬるま湯に30分ほど浸します。
- 長く浸けすぎると旨味も抜けてしまうため、タイマーでの管理がおすすめです。
- キッチンペーパーで包み重石をして脱水(2日程度)
- 水気を拭き取ったら、清潔なキッチンペーパーで包み、バットにのせて上から軽い重石(皿やペットボトルなど)をのせます。
- 冷蔵庫内で2日ほど置くことで、余分な水分が抜けて締まった身質になります。ペーパーは1日1回交換しましょう。
- 好みの形に整え、乾燥ネットなどで干す
- 手のひらで軽く押しながら形を整え、なるべく平らな板状になるよう意識します。
- 虫やほこりを防ぐため、干物用のネットやザルを活用し、風通しの良い日陰に吊るして2〜3日乾燥させます。室内乾燥の場合は扇風機を利用すると効果的です。
乾燥工程と保存方法

天日干し:冬場の晴天時に2〜3日、風通しの良い場所でしっかりと乾かす。朝晩の湿度差に注意し、夜間は室内に取り込むとカビ防止になります。ネットを使うと虫やホコリから守れます。
冷蔵庫乾燥:ラップをせずにキッチンペーパーに包んで冷蔵庫に置くことで、約1週間でじっくりと水分が抜けていきます。冷蔵庫内での乾燥は温度と湿度が安定しているため、失敗しにくい方法です。日ごとにペーパーを取り替えるとより衛生的に保てます。
オリーブオイル漬け:完成したカラスミをオリーブオイルに浸して瓶詰めにすることで、風味を長くキープしながら保存可能になります。特にエキストラバージンオリーブオイルを使うと、香りとコクが加わり、旨味がさらに引き立ちます。冷蔵保存で1〜2か月ほど保存が可能です。
カラスミの食べ方と活用レシピ

スライスしてそのまま
パスタに削って
お茶漬けやおにぎりにも
自家製カラスミに役立つ道具と調味料







まとめ:ボラ以外のカラスミも美味しい!
- カラスミはボラ以外の魚卵でも十分に美味しく作れる
- マグロ・サワラ・スズキなどクセが少ない魚がおすすめ
- 塩漬け・脱水・乾燥の3工程を丁寧に行えば自家製可能
- 酒肴だけでなく、洋風料理にもアレンジ自在
ボラが手に入らない時や、他の魚を使ってみたい時にぜひチャレンジしてみてください。意外な美味しさと達成感が味わえるはずです。